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歯科医師を長年やっておりますと1年に1回以上は聞かれるこの質問。
今回はフッ素に関してお話ししたいと思います!
結論から申し上げると、フッ素は適量・適切に使えば安心かつ安全なものであることに間違いありません。色々な研究や論文で虫歯を抑制する素晴らしい効果があることが報告されており、安全性にも関しても問題ないと報告されています。
しかし、最近でも歯科用のフッ化物において根拠がないにもかかわらず、フッ化物が脳へ影響を及ぼし様々な全身疾患や、認知症を引き起こすから危険だ!という噂が出たりしているのです。
では、なぜこのような実績があるにも関わらずフッ素は危険だ、と言われたりするのでしょうか。
これはフッ素そのものの猛毒のイメージと、歯科で使うフッ素(フッ化物)のイメージを混同してしまっていることに由来すると考えています。
ご存知かと思いますが、フッ素そのものには毒性があり、特に化合物の一つであるフッ化水素酸は触れただけで体を激しく腐食させたり、発生したガスを吸うと気管や肺がすぐに侵されてしまい、場合によっては死に至ることもあります。悲しいことに歯科治療中に、歯科で使うフッ化物とフッ化水素酸を取り違えて患者を死亡させてしまった事件があるのも事実です。
おそらくこのイメージがある方は「フッ素」と聞くと、毒物だ!摂取してはならない!となるのではないでしょうか。
実際、歯科で使うフッ素は安全性の高い、フッ化ナトリウムという化合物となります。これはフッ化水素酸とは全く異なるものであり適量を使えば毒性はありません。また、何かしらのフッ化物は食品の中にも含まれており、食事をしたからといって中毒を起こすことはまずありません。
ただ、異常な量を摂取してしまうとやはり問題は生じます。これはフッ化物に限らずあらゆる物質で言えることではあります。日本においては歯磨き粉や洗口液ぐらいにしか高濃度のフッ化物は含まれていません。また、中毒を起こすとしても歯磨き粉1本を一度に摂取したり、洗口液のボトルを丸々飲み込んだりしない限り、その量には届かないのです。
また、何かしらのフッ化物は食品の中にも含まれておりますが、食事をしたからといって中毒を起こすことなんてなかったですよね。
過去にやや高濃度のフッ化物が飲用水に含まれてしまっていた地域があり、長年摂取してしまうことによって歯の表面が白濁するなどの症状が出る歯牙フッ素症と呼ばれる病気が見られたことがありました。(今もインドなどでは見られることがあります) また、低濃度すぎると虫歯発生のリスクは上昇し、高濃度すぎると上記のような疾患が発生してしまうのです。ですので悪影響が出るレベルの摂取は避ける方が良い、ということですが、今は研究が進み、フロリデーションといって水道水の中に安全な低濃度のフッ化物を溶解させ虫歯発生のリスクを軽減させるようなことを大規模に行なっているところもあります。 (先進国では日常的にフッ化物入りの歯磨き粉を使用することが多いので行うことは無くなってきています。)
また、フッ素について話すと次のような反論や意見をいただくことがあります。
①WHOは6歳以下のフッ化物洗口を禁止している
②ヨーロッパではフッ素入りの歯磨き粉の販売を禁止している
③フッ素をとるとガンや認知症のリスクがあがる!胎児にも悪影響!
これらの意見はネットで少し調べると、めちゃくちゃ記事がヒットしてきます。いろんな根拠?を理由にフッ素(フッ化物ではない)を否定しているようですので、ここでこれらを事実をもとに説明していきたいと思います。
①に関しては禁止(推奨されない)されているのは本当です。ただ、フッ化物入りの歯磨き粉が禁止されていないことを考えると、フッ化物を摂取することが危険だからというよりは、『6歳以下は洗口剤を飲み込んでしまう恐れが高いため禁止している』と考えた方がよさそうです。 フッ化物が危険なのであれば、フッ化物を含むあらゆるものを禁止する方が早いですからね。それもあってか、子供にフッ化物入りの歯磨き粉を使用するときは少なめにしてください、との注意もされています。要は摂取する総量を増やさないでね、ってことですね。
②は嘘です。なぜなら、卒業旅行でドイツ・スペインに行った際にフッ化物入りの歯磨き粉を見かけたからです笑 調べてみても水道水へのフッ素添加は禁止されているようですが、歯磨き粉への添加を禁止しているのは確認できませんでした。
③は最近見かけるようになった噂です。調べてみるとこれも非常に根拠に乏しいことがわかってきました。これを主張しているホームページに記載されている論文などに目を通しましたが、ヒトへの実験はほぼなく、マウスなどに通常使用量の100倍以上の濃度のフッ化物を使用した際にこれらの兆候がみられた、ぐらいの結果しか確認できませんでした。。
検証してみるとすぐに否定できそうなものばかりでした。
長々と書きましたがまとめると、基本的には安全だけどそりゃ過剰摂取したら危険です! に尽きるの一言です。
身体に良い、とされる栄養素も過剰摂取するとほとんどのものが身体に悪影響を及ぼすものですからね。
ただ、6歳以下の子供や妊婦さんなど通常より少ない摂取量で悪影響が出やすい場合は確かにあります。確実に用法・用量は守るようにしてください。
色々述べましたが、歯磨き粉、洗口液など用法・用量を守って使用すればフッ化物は安全であり、虫歯の発生予防に大きな役割を果たしてくれるものになります。ドラッグストアなどで歯磨き粉を選ぶときにもフッ化物が含まれているかなど、ぜひ確認してみてください!
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